呼吸発電

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「息を吹き込むだけで、手軽に発電を行えます!」

国から支給された発電機には、そんな触れ込みチラシがセットになっていた。手のひらサイズの小さな形をしており、息を送り込むための細い管が取り付けられている。付属されていたのは、これまた小さな豆電球2個と、蓄電器が1個。
発送され始めた当初から、批判は相次いでいた。

発電するたびに熱を発しすぎて危険だ。
豆電球が小さすぎる。こんなもので何を照らせというのか。

政府は批判をのらりくらりと躱しつつ、すべての世帯に配り終わったのは12月頃。日本全土を揺るがす大地震が起きたのは、1月も半ばのことだった。

避難所に指定されている体育館では、繰り返し息を吹き込む音が多く響いていた。断線により暗くなった屋内では、至るところで小さな明かりが照らされる。
「こんな物でも、時には役に立つんだね…」
寒さを凌ぐように、熱くなった蓄電器に手をかざす人も多かった。
その他
公開:20/06/10 12:47

早見並並( 神奈川県 )

物語創作に興味があります。

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