温かいベンチ

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 与作は、木こりの息子だった。
 ある日、山奥にある杉を切るように父親に頼まれた。
 山を登っていくと、その途中に、妙な大木が横たわっていた。その大木はとても長く、森の向こうまであるものだった。
 与作はベンチがわりに、その大木に座ってみた。
「あったかいな」
 と、その時だった。
 ゴゴゴゴォー! と轟音を響かせ大木は空へ舞い上がった。右へ左へ旋回し、ジェットコースターの如く飛び回る。
「た、助けてぇ〜!」
 与作は、必死で大木にしがみついていると、その先端からうねって近づいてきたのは、龍の頭だった。与作は龍の背中に座っていたのだ。
「龍神さま、お許しを」
「わしの背中をベンチにした罰だ」
 与作は、やっと許してもらい帰った。だが、大木を見るたびにあの恐怖がよみがえり、木こりになれなかった。

 大人になった与作は、プロ野球選手を目指している。今は補欠で、ベンチを温める毎日である。

 
ファンタジー
公開:20/06/10 12:42
スクー 温度のあるベンチ

豊丸晃生( 大阪 )

ショートショートの神様、星 新一を崇拝しています。お笑い好きで怪談も好き。
お笑いネタのような作品が多いですね(笑)
【受賞作品】
「渋谷シティ」
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞受賞。
「我が家の食卓」
ベルモニーショートショートコンテスト入賞。
「電車家族」
隕石家族ショートショートコンテスト入賞。
「大男の力自慢大会」
「スカイフィッシング」
空想競技2020ショートショートコンテストW入賞。

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