だから、そういう事じゃなくて……!

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花壇にスイカズラが咲いていた。
蔓からこぼれる白と黄色。鼻をくすぐる匂い。
「花の蜜、吸った事は?」
「花の蜜は、虫が吸うと認識していた」
だろうな。まったく君らしい答えで。
「済まない。つまり経験がないという意味だ」
なぜ言い直す。謝るところが違うぞ君。
「別名『金銀花』だったか」
「日数経過につれ、変色する様を見立てたものだ。縁起物として好まれ、漢方薬にも利用される」
さすが学者、知識だけは豊富だ。
「金の蜜と銀の蜜、どちらが甘いと思う?」
白い花を引き抜く。二つずつ並んだ花の片方。付け根を咥えると仄かに甘い。
「試してみないと判定出来ない」
「なら、試してみれば?」
十秒沈黙。軽く首を傾げ、待つ。
「……分かった」
回れ右。そのまま離脱。
「糖度計で測定しよう」
君。そこは『チュー』だぞ。乙女の純情を踏み躙るな。この首の角度をどうしてくれる。
しかし、そんな君が致命的に可愛いのだが。
青春
公開:20/06/09 20:31

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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