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「ねえ、怖くないの?」
 私の目を見つめて亜耶が問う。
「怖いよ。……でも、あなたがいてくれるから」
 月明かり。闇に慣れた私の目は、亜耶の輪郭をゆっくりと辿る。
 長い髪は漆黒色に濡れている。艶やかな唇と大きな瞳は月光に反射して仄かに輝く。
 私には亜耶しかいない。亜耶が私と一緒にいてくれるから、パパとママにどんなに無視されても今日まで耐えてくることができた。
 友達は亜耶しかいなかった。ただの友達とは違う。姉のような妹のような恋人のような、そんな関係。
 明日、パパとママはここを出て行くという。もちろん、私を置いて。
「明日からどうするの?」
 私の目を見つめて亜耶が問う。
「そうだね、私もどこかへ行こうかな」
 もちろん、行く当てもお金もない。
「じゃあ、私が変わってあげる。ここに残るのならもうつらい事なんて何もないよ」
 私が頷くと亜耶はするりと鏡から出てきた。
「バイバイ、亜耶」
その他
公開:20/06/10 09:03
更新:20/06/10 10:11

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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