30分前

「ごめん、待った？」
「ううん、今来たところ」
という、デートの定番のやり取り。
彼氏と彼女のどちらが待たせたのか。上記からでは分からない。
さらに分からないのは、「ごめん」と「ううん」の度合い。
そして、本当に「今来た」かの真偽。

今回は、彼氏が待たせたパターン。
僕のことだ。
「ごめん」の度合いは、本当に申し訳ない思い。
「ううん」の度合いは、彼女のことだから、本当に気にしてない。
「今来た」かの真偽は、彼女のことだから偽。
それを知る僕は、「ごめん」をもう一度言いたくて言った。
「ううん」
彼女のもう一度の「ううん」の度合いは、表情が笑顔で、彼女が僕の手を握ってきたから大丈夫だと分かる。
先程、「今来た」かの真偽を偽としたのは、同様のことが冬にもあり、その時、握った彼女の手が冷たかったからだ。



そもそも待ち合わせ時間に遅れてはいない。
お互い会いたくて早く来すぎてしまうのだ。