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私はセイレーン達の圧力に負け、オホーツク海を追い出されてしまった。
歌声で船乗りを狂わせるアコギな商売をしていたわけではない。
ひとりでいるのはとても寂しいから、妖術で人間の魂を虜にしていただけなのに。

私のこの醜い海蛇の下半身を見たら、誰も私を愛してくれない。
みんな恐怖で顔を凍らせ、一目散に逃げていく。

居場所を探し、何ヶ月も泳いで南の海に辿り着いた。
海に身を沈めてじっと夜を待つ。
しかし、南国のギラギラと輝く太陽で水温は暖かく、すっかりのぼせてしまった。

ズルズルと長く重い体を這わせ暗闇に紛れて砂浜にあがる。
「あ、海蛇女だ!」
私の醜い姿を見られてしまった。もう、ここにもいられない。
しかし、「おネエさん、クール!」「一緒に踊ろうぜ!」
私はぐいっと腕を引っ張られ、浜辺のビーチパーティに参加する。
夜空に上がる鮮やかな色の花火は、まるで解き放された魂のようだった。
その他
公開:20/06/08 23:30
南の島はやっぱり最高 海蛇女は美女が多い

まくの沙江

自分なりのショートショートができればいいと、投稿させてもらっています。
皆様の作品やコメントは、新しいアイディアが生まれて勉強になります!

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