若さゆえの選択 (詩乃) ~この世に正解なんて無い~

5
5

 子供の頃から、詩乃は万華鏡が大好きだった。
 色とりどりの鮮やかな模様が、小さな世界で絶え間なく変化する様子に、わけもなく夢中で見入った。キラキラしたその世界を眺めている間は、どんな辛いことがあってもその美しさに浸ることが出来る。いつか、万華鏡職人になりたい。詩乃の中でそんな思いが芽生えてくるのは、時間の問題だった。

「自分の将来のことだぞ? もっとちゃんと考えろ。お金を稼ぐことは、すごく大変なんだから」
 地元の公務員としてコツコツ真面目に働いてきた父とは、当然衝突した。詩乃の思いが本気であればあるほど、父の口から深いため息が漏れる。

「子供じゃないんだから、いい加減大人になれ」
 頭ごなしに父の考えを押し付けられ、母もそんな父に同意するように、黙って頷く。
 家を出るしかない――。万華鏡職人になることは、詩乃にとって、どうしても譲れない夢だった。
 迷うことなく、上京を決めた。
青春
公開:20/06/08 23:17
更新:20/06/10 05:49
若さゆえの選択

草方良月( 日本、東京 )

はじめまして(^^)   くさかた よしつき と申します。
本が好き、特に小説が好きで、いつしか自分でも書いてみたい……!という思いが募るようになりました。

ほそぼそとですが、noteやTwitter、ブログもやってます♪

(Note)  https://note.com/yoshitsuki_novel
(Twitter)  草方良月@書いてるときは無我夢中 (@kurrosi_ocean)
(ブログ)  それでも書くのが好きだから (https://kurossi-ocean.com/)

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容