光の車道

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徳川家康の出生地である岡崎城付近の道路を車で走行していると、車線が突然増えた。
何気なく増えた車線を走行していると、岡崎城からみて北へ伸びる光の車道が正面に現れ、その光に導かれるように車が自然に進んで行った。
光の車道が家康の菩提寺である大樹寺で途絶えて車も停止した。戦国時代、駿河国の今川義元が家康とともに尾張国に侵攻し、織田信長との桶狭間の合戦で敗れ、家康が逃げ帰った寺で知られる。
車から降りて大樹寺の本堂に入ると、若武者が自害しようとしていた。慌てて本堂に駆け込んで来た寺の住職が若武者を制し、再起して天下太平の世を目指す武将としての使命を諭した。
大樹寺の本堂から出ると、光の車道が消えかかっていた。大急ぎで車に乗り込み引き返すと、光の車道は岡崎城付近で消え去り、先ほどの道路に合流した。
あの光の車道は、岡崎城と大樹寺を結ぶ歴史的眺望として有名な約三キロの直線ビスタラインではなかったか。
その他
公開:20/06/07 16:48
徳川家康 岡崎城 車道 大樹寺 戦国時代 今川義元 織田信長 桶狭間 ビスタライン

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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