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谷間に夜空が黒いじょうご型の両サイドは急峻な山で、そろそろ湖が近い二級河川の桜並木のある堤の彼岸と此岸とは近かった。
まもなく小さな橋の上には星のない夜空が大きい。と自転車を漕いでいると、川原に四輪の彼岸花が明滅する。それは二台のトラックのテールランプだと分かってからも不思議だった。トラックはきちんと並んで荷台の扉をそれぞれ半開させ、真っ暗では眠れない寝室の小さなオレンジ色の灯りを漏らしている。
右から左か。左から右か。
誰一人姿を現さない通りすがりの後の小さな橋。無数の小さな花火の火花が下流の大きな橋の下で音も匂いもない。浴衣の子らの前歯はきっと抜けているだろう。
橋を過ぎれば両側に田んぼ。前方に止まりそうな自転車を追い越す。男は嵩張る何かをリュックから取り出そうとして激鉄を引っかけた。
空砲、空に一発。一瞬、全蛙が沈黙し、私は誰かに背を押されるように、帰り道を上っていった。
まもなく小さな橋の上には星のない夜空が大きい。と自転車を漕いでいると、川原に四輪の彼岸花が明滅する。それは二台のトラックのテールランプだと分かってからも不思議だった。トラックはきちんと並んで荷台の扉をそれぞれ半開させ、真っ暗では眠れない寝室の小さなオレンジ色の灯りを漏らしている。
右から左か。左から右か。
誰一人姿を現さない通りすがりの後の小さな橋。無数の小さな花火の火花が下流の大きな橋の下で音も匂いもない。浴衣の子らの前歯はきっと抜けているだろう。
橋を過ぎれば両側に田んぼ。前方に止まりそうな自転車を追い越す。男は嵩張る何かをリュックから取り出そうとして激鉄を引っかけた。
空砲、空に一発。一瞬、全蛙が沈黙し、私は誰かに背を押されるように、帰り道を上っていった。
ファンタジー
公開:20/06/08 10:15
生駒通子
新出既出です。
twitterアカウントでログインしておりましたが、2019年末から2020年年初まで、一時的に使えなくなったため、急遽アカウント登録をいたしました。過去作は削除してはおりませんので、トップページの検索窓で「新出既出」と検索していただければ幸いです。新出既出のほうもときおり確認したり、新作を挙げたりします。どちらも何卒よろしくお願いいたします。
自己紹介:「不思議」なことが好きです。
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