「ぶたれだんご」

その日、謎の商人に買わされたのは【ぶたれだんご】という団子だった。
見た目は普通の団子。これを食べさせると、食べさせた者が食べさせられた者にぶたれる、という代物だそうだ。
毒味にひとつ食べてみた。中にみたらしのようなものが入っていて美味い。ただ、自身をぶつような事は起きなかった。
そもそも、ぶたれるとわかっていて誰が食べさせるのだろうか。とはいえ、本当にぶたれるのか気になるのが人間の性。さっそく彼女に食べさせる事にした。強烈なビンタを持っているから少し怖いけど。
「お団子食べる？」
「わぁ、美味そう！　いただきまーす」
彼女が何の躊躇いもなく、団子を口に放り込む。喉に詰まらせないでくれよ、という心配をよそに、あっさり食べ終えた。ぶたれる気配は、ない。
ぶたれないじゃん。どうやら商人に騙されたようだ。結構なお値段したのに。
「これじゃあ、単に団子を食われただけじゃないか！」
と、ブーたれた。