夢のつづき

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「シャボン玉飛んだ 屋根まで飛んだ 

  屋根まで飛んで  こわれて消えた」

高校卒業と同時に俺は田舎を飛び出した。煌びやかな都会に憧れて、何にも考えずに東京へ来た。まぁ、一事が万事、そんな調子だから生活もめちゃくちゃだった。借金取りに追われるなんてザラだったし、結婚はしたものの、俺がアパートに戻ったときにはもぬけの殻で妻や子どもにも逃げられた。


俺だって夢はあった。確かにあったんだ。だけどさ、こうなっちまった。仕方ねぇよな。


さて、夢のつづきでも見るとしようか。俺はゆっくりと目を閉じた。瞼に楽しかったかつての日々が色鮮やかに流れていく。涙が頬を伝って、ぽとりと地面に落ちた。


「シャボン玉消えた 飛ばずに消えた

  産まれてすぐに こわれて消えた」



冷たい空気がピンと張りつめた早朝。誰もいない河川敷の大きな木の下に人の形をした短冊がゆらゆらと揺れていた。
ホラー
公開:20/06/07 22:46
更新:20/06/08 09:56

Yukino.

2020年6月1日より執筆活動開始(これまでオリジナル小説、二次創作等の執筆歴なし)

ストーリーが映像化して突如、脳内を流れ始めるタイプです。みなさまの応援、コメントが励みとなります。作品をお読みいただき、心より感謝申し上げます。

twitter @hikaritokage14


Yukino.

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