タロットカードの死神

「赤ちゃんが元気に生まれてくるか占ってください」
愛おしそうにお腹を撫でる女性が店にやって来た。
私はタロットカードを並べ、１枚ずつ捲っていく。
う～ん…捲られるカードはどれも不吉なもの…女性も不安そうに顔を曇らせる。
最後の１枚。恐る恐る捲ったそれは死神の正位置だった。
（終わった…）
私は彼女に酷な結果を告げなければならない。
「それ…なんですか？」
女性はカードを指さす。正位置の死神が何故か、逆立ちしていた。
「死神の逆位置ですね。誕生を意味するカードです。安心してください。お腹の赤ちゃんは元気に生まれてきます」
何これ？と私も思いつつ、それらしい言葉を女性に告げた。

女性が店を出た後、改めて死神のカードを見てみる。
カードの中の死神が肉のない細腕で汗の出ない額を拭っていた。
死神は戦車を借りると『ちょっと病院行って中絶された命をあの女性に渡してくる』と言って運命の車輪を走らせた。