パスワード

　父の七回忌を前に数年ぶりに実家に帰った。俺は、若いときかなりやんちゃをして家族にもひんしゅくを買っていたので、家を出た後はあまり寄りつかなかったのだ。
　仏壇のある部屋で、線香をあげ、部屋を出て行こうとしたとき、チーンというおりんの音がした。
　振り返ると、半透明になった父が、立っていた。不思議と落ち着いて見ることができた。
　父は声にならない声で、俺に一つの依頼をして消えた。
　
　俺は、母に父が重用していたパソコンを出してもらった。パスワードがわからないので誰も使えず放置されていた。
　俺は、父から聞いたパスワードを使ってＰＣを立ち上げ、その中のメールやメモの内容を消去した。中には、父の秘密、特に浮気や賭け事、へそくりに関することがあった。仕上げにハードディスクも破壊した。

　七回忌法要後、墓に水をかけたとき、墓石からしたたる水の中に小さな虹が出た。親父からの感謝の印だった。