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道端にシロツメクサが咲いていた。
「昔、花かんむりを作ったな」
しゃがんで1本摘む。白い花がぽやぽや揺れた。
「生憎、僕は経験がない」
君は男子だから。何となく緑の葉を撫ぜる。
「四つ葉も探した。なかなか見付からなくて……」
「四つ葉とは、遺伝子異常による奇形だな」
性別以前の問題か。手招くと隣にしゃがむ。万事に素直で真面目。しかし彼の辞書に『郷愁』や『情緒』の文言は存在しない。
「一緒に探そう」
「……残念だが、この群生は正常だ」
乙女の夢を五秒で砕くな。鼻を弾いてやろうとしたら、真剣に再検索中だった。
「……残念だが」
残念なのは君の頭だ。今更嘆いても仕方ない。
「お手」
あっさり出す。幸い左利きだ。摘んだ1本を輪にして薬指にはめる。
「あげる」
「折角だが、研究に差し障る」
丁寧に解いて、白衣のポケットに入れた。
君。そこは『お返し』だぞ。
もっとも、そんな君が堪らなく可愛いのだが。
「昔、花かんむりを作ったな」
しゃがんで1本摘む。白い花がぽやぽや揺れた。
「生憎、僕は経験がない」
君は男子だから。何となく緑の葉を撫ぜる。
「四つ葉も探した。なかなか見付からなくて……」
「四つ葉とは、遺伝子異常による奇形だな」
性別以前の問題か。手招くと隣にしゃがむ。万事に素直で真面目。しかし彼の辞書に『郷愁』や『情緒』の文言は存在しない。
「一緒に探そう」
「……残念だが、この群生は正常だ」
乙女の夢を五秒で砕くな。鼻を弾いてやろうとしたら、真剣に再検索中だった。
「……残念だが」
残念なのは君の頭だ。今更嘆いても仕方ない。
「お手」
あっさり出す。幸い左利きだ。摘んだ1本を輪にして薬指にはめる。
「あげる」
「折角だが、研究に差し障る」
丁寧に解いて、白衣のポケットに入れた。
君。そこは『お返し』だぞ。
もっとも、そんな君が堪らなく可愛いのだが。
青春
公開:20/06/06 23:59
更新:20/06/07 00:03
更新:20/06/07 00:03
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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