河童がくれたミイラ

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「河童がくれたミイラ、見せてやっから、学校の帰りにうち寄れよ」
昭和43年2学期の始業式の日。そう話しかけてきたのは、同級生の大塚だった。昭和5年の夏、溺れかけているところを河童に助けられた、大塚太助の孫である。
大塚の家に着くと蔵に案内された。
大「ここの河童は、何も悪さしねえよ。天保の大飢饉の時は、近所の人の風呂桶に水を入れて回ったんだ。まぁ、見ろよこれ」
茶箱の中には、得体の知れない黒い物が。
俺「何だ!これ?」
大「鯉だ。ミイラになってる。命を助けてもらったお礼に、爺ちゃん、うちで取れたきゅうりを、河童にお供えしたんだよ。64本」
俺「64本?」
大「河童=64。そうしたら、河童が返礼に、池の鯉を1匹くれたんだってよ」
俺「1匹?」
大「鯉の季節には、早かったらしい。脂が乗って一番旨い鯉の旬は、冬みたいだ」
その瞬間、
ピンキーとキラーズの、「恋の季節」が、どこからか聞こえてきた。
その他
公開:20/06/05 19:00
更新:20/06/05 19:29
河童小シリーズ【完結】

渡辺 隆一( 千葉県野田市 )

千葉県野田市在住の、渡辺隆一です。
小学4年生の頃から、文章を書くのが
好きで、今も、趣味で書いています。
ショートショートが、好きです。

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