13
13

「やっぱりいた」
 俺は防犯カメラの映像を停止させた。
 コンビニのイートインや、カフェなどの通りに面したカウンター席に車が突っ込む事故に興味をもって二年。そこにはいつも、背の高い老人が映り込んでいた。老人はいつも同じ服で、コーヒーにスティックシュガーを五本も入れ、ぼんやりと外を見ている。車が突っ込む直前も直後も。その後、騒ぎに紛れて姿を消し、翌日には同様の事故現場の防犯カメラに映りこんでいる。稚内市のコンビニの翌日が、日南市のファミレスということもあった。出没に規則性はなく、先回りは不可能だ。俺は毎日、当てずっぽうで、老人が隣に座る日を待ち続けた。

 「あなたのことは知っています」
 熱海のスタバで、隣に老人が座った。俺は息が詰まった。
「あなたが悪いのです。私はずっと一人だったのに」
 その時、俺の真横へ車が突っ込んだ。
 老人は姿を消し、俺は無性に甘ったるいコーヒーが飲みたかった。
ミステリー・推理
公開:20/06/05 18:02
更新:20/06/05 18:03

新出既出20( 浜松市 )

新出既出です。
twitterアカウントでログインしておりましたが、2019年末から2020年年初まで、一時的に使えなくなったため、急遽アカウント登録をいたしました。過去作は削除してはおりませんので、トップページの検索窓で「新出既出」と検索していただければ幸いです。新出既出のほうもときおり確認したり、新作を挙げたりします。どちらも何卒よろしくお願いいたします。
自己紹介:「不思議」なことが好きです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容