温度のあるベンチ

24
25

近所の公園に不思議な石造りのベンチがある。
温度によって色が変化する石でできているのだ。
通常は大理石に似た白いベンチなのだが、その日の温度が低いと紫色や青色に変わり、温度が高いとオレンジ色や赤色に変わる。だから冬場は真っ青で、夏場は真っ赤になることが多い。
このベンチ、それだけの代物ではない。
座るひとの心象によっても色が変わるのだ。
気持ちが落ち込んでいるブルーなひとが座ると青色に変わり、ラブラブで情熱的なカップルが座ると赤色に変わる。
ある日、男が座ったベンチの色が真っ黒に激変した。
まもなくしてパトカーのサイレンが鳴り響き、公園に刑事や警察官がぞろぞろやって来た。
「お前は全国指名手配中のTだな! やっと見つけたぞ。逮捕する」
「な、なぜ俺のことがわかったんだ……!?」
訳がわからず困惑する男。逃げる余裕もなく呆気なく御用となった。
実は、犯人だけにベンチがクロに変化していたのだ。
ミステリー・推理
公開:20/06/06 07:46
スクーのお題 温度のあるベンチ 公園 石造り ベンチ 温度 心象 犯人

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容