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 東京タワーに登りたいと言って聞かないので、一緒に着いて行ってやった。それなのに、もう飽きた、なんて抜かしやがった。この女、と思った。
 俺はこの女を愛しているのだろうか、と、背中の開いたワンピースを着ている女の背中の毛を見ながら考えた。俺はこの女を愛している、と判断した。女の背中の毛が、ゆらゆらと揺れて見えた。
 俺たちは昼食を取るため、蕎麦屋に入った。そこで女はいきなり充電ケーブルを取り出し、 DSを充電し始めた。俺は、慣れた手つきでケーブルを挿す女の手元をずっと見ていた。第一関節に生えている毛を、見ていた。女は、充電が開始されたことを確認すると、親の死に目に間に合ったような顔をした。それから、慶ちゃん(俺の名前だ)、頭に汗かいてるー、と笑った。俺はツルツルの自分の頭を、おしぼりで拭った。
その他
公開:20/06/06 02:01

杉将

基本的に、無、です。

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