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布団…枕…そして次の店の看板には鼾(いびき)…たしかに三つとも関連はあるけど、鼾専門店とは…。

中に入ると白い袋が棚に並んでいた。
「いらっしゃい」
店主らしき男が声をかける。
「この袋の中身は?」
「初めて来られたんですか?鼾ですよ。上の棚のは工場から届いた新品です」
「何に使うんです?」
「寝る時耳にあてるんですよ。誰かが隣で寝ている感じでないと眠れないという人が多くて。特にあなたみたいな若い女性」
「下の棚のは?」
「中古の鼾ですよ。売りに来る人もいるんです」

ああ…別れの原因にもなったから彼は売ったのね。でも今は愛しく感じられる。まさかまた聞けるなんて、運命…?彼が隣にいる様で安心する。もう…眠くなってきた。もしかしたら私が売ったアレも…。

ああ…袋から聞こえるのは別れの原因にもなった彼女の…まさかまた聞けるなんて…。今夜は安心して眠れそうだ。この中古の歯ぎしりのおかげで…。
ファンタジー
公開:20/06/05 22:07
更新:20/06/06 09:40

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