異空間バケツ

12
6

 玄関のドアを開けると、妙なバケツがあった。
 バケツを覗くと、底がない。底がないのだ。その向こう側は、まるで異空間が広がっているようだった。バケツを持ち上げると、地面がちゃんとあり、どうやらその向こうはどこかに繋がっている感じがした。
 おれは、傍にあった石ころをその中へ放り込んでみた。が、落下した音もない。
「ご利用ありがとうございます」
 声に振り向くと、黒ずくめでフード付きの服を着た男が立っていた。
「君のものか?」
「お使いになりましたので、あなたのものです」
「まさか、金を」
「一週間お試しになってから、というのはいかがでしょう」  

 あの男は、このバケツが最も必要な人間だと、見抜いていたのか……。

 朝。二人の刑事が訪ねてきた。
「奥さんが行方不明らしいですな」
「そうなんです。心配で…」
「うちの署に、その遺体が落ちてきたんだよ。指紋の付いた石ころと一緒にね」


 
ミステリー・推理
公開:20/06/04 17:02
スクー 異空間バケツ

豊丸晃生( 大阪 )

ショートショートの神様、星 新一を崇拝しています。お笑い好きで怪談も好き。
お笑いネタのような作品が多いですね(笑)
【受賞作品】
「渋谷シティ」
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞受賞。
「我が家の食卓」
ベルモニーショートショートコンテスト入賞。
「電車家族」
隕石家族ショートショートコンテスト入賞。
「大男の力自慢大会」
「スカイフィッシング」
空想競技2020ショートショートコンテストW入賞。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容