読像術禁じ手

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その日も私は塾に向かった。オフィスビルの一室に読像術を学ぶ同好の士が研鑽する。読像術とは種々の画像や図像から本来の意味を離れて、画像に潜むモノを読み取る技術、というか技道である。
私が属するのはX線写真を対象に用いるX線流である。
十人ほどがすでに稽古に励んでいる。彼女はやはり来ていない。塾で知り合い仲良くなったのだが、ささいな言い争いのせいで、一ヶ月ほど彼女は姿を見せない。
私は師範から数枚のX線写真を受け取って席で静かに眺めた。
画像が何か不自然だ。気になって仕方ない。
…私は師範に断りもせず塾を出て、とあるカフェに向かった。

カフェには予想通り彼女がいた。
「来てくれると思ってた。教材に私とカフェの場所を潜ませたわ。潜像が禁じ手なのは知っている。師範に頼んだら今回だけはと許して下さったの。会ってこの前のことを謝りたかったの」
そのあと彼女と睦まじい夜を過ごしたのは言うまでもない。
その他
公開:20/06/04 07:20

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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