ミミズ

公園から自転車で家に帰る途中、大きなミミズが何匹も道を渡っていた。
「気持ち悪い！」
兄は自転車でミミズを轢いた。それでもミミズは動いている。本当に気持ち悪かった。

その日の夜、私は食欲が湧かなかった。大好きなスパゲティがさっきのミミズに見えて仕方ない。
「いらないんだったら食うぞ」
兄がスパゲティを美味しそうに食べるのを見て私はゾッとする。やっぱり、ミミズにしか見えない…

数時間後、兄がお腹を壊した。
トイレで吐いては両親から「食べ過ぎよ」と怒られている。
覗いてみると兄は口からミミズを吐き、苦しそうにしていた。

兄は拒食症もどきに罹ってしまった。
米や野菜は食べる事が出来る。しかし肉を食べると体が拒否反応を起こしたように吐いてしまうのだ。
そんな兄でも唯一食べられる肉がある。
今日も両親はそれを輸入して、兄の分だけその肉を使用する。
兄は気付かない。その肉が食用ミミズである事に。