赤い花

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母の日のプレゼントに、南国の奇抜な花を贈った時のことだ。仕事が忙しく郵送で届けたので、母から連絡が入ったのはしばらく経ってからだった。
「ありがとう! しっかりお世話して綺麗に育て上げてみせるから、楽しみにしてて」
メールの本文とともに写真が一枚添えられていた。笑顔を浮かべる母の姿と、その手に収まる赤い花の咲く植木鉢が印象的だった。

お盆の時期。久しぶりに帰省する俺は、家族との再開を楽しみにしつつ、赤い花のことも気になっていた。母のことだ。しっかり育て上げて、花壇の方に植え替えているに違いない。
そんなことを思っていた俺は、実家の庭を目の当たりにして言葉を失う。
狭い庭が、どこぞのジャングルのように茂っていたからだ。

「悠にもらったお花を目立たせるには、この方法しかなかったのよね」
「…確かに目立ってはいるけども」
赤い花が一輪。暗い緑で覆われた世界の中で、彩りを与えていた。
その他
公開:20/06/03 12:49

早見並並( 神奈川県 )

物語創作に興味があります。

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