そのうそほんと

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 嘘が書けない鉛筆、らしい。
 そんな触れ込みで、友人の友人の友人のさらに友人から、さらにその先があるのかは知らないけど、とにかく、色んな人たちの手を渡ってきた鉛筆だ。
 さて、まずは何を書こう。メモ用紙に、自分の名前を書いた。
 書こうとした。
 書き上げた文字列は、違う。
 私の名字ではない。
 消しゴムで消しては書き、書いては消し、消しては書き。
 私の名字ではない。はずだ。
 でも、嘘が書けないというのが、本当なら。
 その名字は、母に毎年年賀状を送ってくる男のものと同じだということに気がつき、「私は何も知らなかったことにする」とメモに走り書きをする。
 これは嘘ではない。嘘ではないから、ちゃんと書けた。
 この鉛筆は誰かあげようか、今はもうそんなことしか考えないようにする。
その他
公開:20/06/02 23:32

海月漂( にほん )

思いつきを文章にするのが好きです。
怪奇からユーモアまで節操無く書いていきたいです。
少しでも楽しんでいただけますように。

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