悩みの角度

2120年
「大きくなったら困っている人を助けられる人になるんだ」
きっと同じ夢を抱いた他の人が壮大に叶えてしまったようだ。
今やこの世界は完璧な世界となっていた。
安定した好景気、非の打ち所の無い政治。交通事故や犯罪は5年連続0件だ。
落ちこぼれという言葉は化石語となっていた。
皆が優秀で何一つ欠点が無い。失敗など存在しない世界。

きっと、人類が求めていた世界の完成形を生きているんだ。
誰も誰の助けを必要としない世界。
それは同時に僕の夢を叶えられない世界でもあった。
でも、気がつくと困っていそうな人を探している。
あまりにも世界が完璧で、困っていても助けを求められないんじゃないかと。今の自分がそうであるように。

…今の自分がそうであるように。
辺りを見回し、一番自信に満ちあふれた人を見つけ駆け寄った。

「すみません。困っているんですが、助けていただけませんか。」