予感たまご

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予感たまご


透明のプチプチしたたまごが、毎日どこかで生まれている。
大きさはめだかの卵くらい。注意すれば見えるが、ほとんど気付く人はいない。
卵からは、何が羽化するかはわからない。
あるときは、新緑のみずみずしい初夏の香りになる。
あるときは、雨が降りそうな、しっとりと重いにおいになったりする。 
今日はカレーかな?と思わせる、玉ねぎやお肉を炒めたときの香りも予感たまごが遠くまで運んでいる。 

今日のバスにはなんだかあの子が乗っている気がする、なんて予感を運んでくれることもある。胸がざわざわする別れの予感や、甘酸っぱい恋の予感運んでくることもある。
予感たまごは日常の隙間にいつもある。部屋の隅に、引き出しの角に、椅子の裏に。
誰にも気づかれずひっそり生み落とされたたまごの中で予感は今日もしずかに育っている。
ファンタジー
公開:20/06/02 14:38

arupara( 東京 西部 )

田丸さんがご出演された『情熱大陸』であらためて空想の力を思い知らされ、読むだけじゃなく書いてみたくなりました。

書いた文章のイメージをイラスト化するのが最近の楽しみです。

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