レインコート

僕がもっているレインコートは特別だ。黄緑色で、頭のところには、ツルッとしたお皿がくっついている。
そのレインコートを着ると「河童」になることができるのだ。「河童」になると、水分があるところに溶け込めるようになる。雨に溶け込んで、移動するのはとても楽しい。
だから僕は6月が大好きだ。毎日雨が降れば良いと思っている。
紫陽花の花のきらきら光るしずくに溶け込んでみたり、カタツムリの殻の上のしずくに溶け込んで遊んだりする。水溜りに溶け込んで、いろんな人が通り過ぎていくのを見てみたり、雨を上に辿っていって、空に行くこともできる。夢のような時間だ。
ただし、効用はレインコートを着ている間だけ。レインコートが破けたり、脱げてしまうと、ただの僕に戻ってしまう。遊べるのも雨の日に限る。頭のお皿が乾いてしまうと、やはり僕に戻るからだ。
次はいつ雨が降るかな。逆さに吊るしたてるてる坊主がベランダで揺れている。