殺し屋

-A-
自分の仕事には自信を持っている。
失敗は死に直結する。コンマ数秒の判断が結果を左右する。
志は高くあらねばこの仕事は務まらない。
当然、一匹狼を好む。心を許せるような他人は必要ない。

はずだった。

つい最近、バーで知り合った女と親しくなった。
初対面で馴れ馴れしかった。癇に障ったがなぜか妙に馬があった。
価値観が同じで、何より私の考えを称賛してくる。
もちろん悪い気はしない。ほどなく色々なことを語り合える仲になった。
照れくさいが友人と呼べるかもしれない。

仕事にも影響が出てきた。
「奴の評価を下げるような事はできないな。」
人差し指に力が入るのを感じた。

-B-
カウンターに座るターゲットに近づき、努めて明るく話しかけた。
まさか次のターゲットが同業者とは。
素人相手の手段では当然すぐに見破られてしまうだろう。
しばらく話すうちに今回の凶器を見定めた。

『…褒めるか。』