甘い男

6
4

男は甘かった。どんなことに対しても怒らず、周囲に対して優しさを振りまく。それは決して気紛れによる行動ではなく、確固たる意志に基づいた物だった。そんな男を見て、嫌いになる者がいるわけもなく。彼の周りにはいつも多くの人で溢れかえっていた。頼られれば断らない、彼の甘さにも拍車がかかる。
結果、男の体に変化が生じた。

「……あなた、またベトベトしてるわよ」
「ああ、本当だ」

妻の指摘に男は笑顔で答え、タオルで顔を拭き取ろうとする。しかし、水滴全ての粘性が強く、タオルがすぐにべたべたしてくる。まるで顔に、水飴でも塗ったような状態だ。

事実、男の体からは、甘い甘い汗が流れ出てくるようになっていた。それは男の甘い考えに呼応するように、少しずつ糖度が高まり、粘り気もつくようになっていた。夏場なんかは虫によってたかられてしまい、妻がヒステリックになることも。

ーー甘すぎるのも、考えものである。
ファンタジー
公開:20/06/01 11:02

早見並並( 神奈川県 )

物語創作に興味があります。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容