6月の紫陽花とカミナリカエル

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その年の紫陽花が特別綺麗に咲く数日間。
とある山奥の紫陽花村では、鈍色の雲の隙間から雨粒と共に『カミナリカエル』が降ってくる。
青みを帯びた緑色の背中に、白い稲妻模様が入っているカエルたち。
6月の薄暗い曇天に住む彼らは、美しい色を求めて地上にやって来るのだ。
彼らが紫陽花を見て楽しんでいる間は、どんなに雨が降って空が不機嫌な唸り声をあげても雷が落ちない。
そのせいか、カミナリカエルを「雷帰る」と表記することもある。

紫陽花村の雷害が減る一方、カエルに追い返された雷はいつどこに落ちるのか。
実はカミナリカエルが降ってこない、紫陽花が咲いていない地域にまとめて移動すると言われている。
最近では噂を聞いた近隣の村も、みんな庭で紫陽花を育て始めたそうだ。

カミナリカエルは、こうして地上の紫陽花を増やそうとしているのかもしれない。
ファンタジー
公開:20/05/31 23:59
更新:20/05/31 23:59

夏巳

Twitter@N_natsuo

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