星を追い掛けた少年

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 闇色の空に光輝く無数の星々に、目を奪われて息を呑む。
 穏やかな夜風があたる丘の上。
 こんな美しい光景がこの世界にあったのかと、感動を通り越して胸が詰まる。
 思わず頭上に手を伸ばした。醜い痣が目立つ、手の甲と腕が視界に映る。出来の悪い自分は、何をしても失敗ばかり。仕事場で殴られ蹴られても、覚えの悪い頭はいっこうに治らない。
 けれどもしあの綺麗な星が自分の元にあったなら、少しは自信を持てるだろうか。あの星を掴むにはどうしたらいい? 
 来る日も来る日も考えた。
 なけなしの給料で本を買い、星を捕まえる方法を探した。夜空に届くほど高く跳べるように、毎日長い距離を走って足腰を鍛えた。

 そうして月日が巡った。けれど、未だあの星達を掴む事はできない。そっと目を閉じて、心の中でカウントダウンをする。

 3、2、1。

 宇宙服に身を包んだ僕は、あの時に見た星空を思い出していた。
その他
公開:20/05/31 21:16

ユシキ

 素敵な文章に触れあいつつ、自分も自分の言の葉を、ひっそりと綴ってみたいです。

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