幸福の実のなる木

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 その木になる実を食べた人は、幸せになる――。
 噂は人々の口から口へと伝わり、いつしかその木は、『幸福の実のなる木』と呼ばれるようになった。
 ある人は、その実を食べた三日後に宝くじが当たった。ある人は、その実を食べてしばらくすると結婚した。ある人は、長年苦しんでいた病がコロッと治った。
 我も我もと求める人が増える一方で、誰も『幸福の実のなる木』がどこにあるのかは知らなかった。
「どうせ、ただの都市伝説だ」「そんな木、あるわけないわ」
 一時はテレビを騒がせた『幸福の実のなる木』の話題も、いつしか人々から忘れ去られた。

 世界の果て。
 男は、『幸福の実のなる木』を守る番人だった。そして最近、彼は心からの幸せを味わっていた。もう、働く必要がなくなったからだ。
「ああ、なんて俺は幸せだろう……!」
『幸福の実のなる木』をかじりながら、男はそう言った。実は全部、男に食われてしまったのだ。
SF
公開:20/05/31 19:46
更新:20/05/31 20:07

草方良月( 日本、東京 )

はじめまして(^^)   くさかた よしつき と申します。
本が好き、特に小説が好きで、いつしか自分でも書いてみたい……!という思いが募るようになりました。

ほそぼそとですが、noteやTwitter、ブログもやってます♪

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