悪口ゲーム

塾の帰り。僕らはバスに乗り込むと窓を開ける。
赤信号でバスが停まる。青信号で動き始めるとゲームスタートだ。
信号を待っている人に大声で悪口を叫ぶ。
突然の悪口に驚く人が大半だが、時折顔を真っ赤にして叫び返す人もいる。それが面白くて僕らはこの遊びをやっている。

その日、悪口を叫んだ相手はいかにもトロそうなデブだった。
デブに「デブ」と叫ぶとデブは走ってバスを追いかけて来た。
デブは意外と足が速く、ずっとバスを捉えている。
バスが停留所に停まった。デブはすぐそこだ。
友人は「ヤバい！」と言ってバスから降りた。僕は怖くて身を隠した。
友人はデブに捕まったようだ。「ごめんなさい」と何度も謝る声が聞こえた。
僕は身を隠したまま、次の停留所で降りると急いで家に帰った。

翌日、友人が学校にやって来た。細かった友人は激太りしていた。
友人は僕を見て「逃げろ」と言い外を指さした。
僕もデブに見つかった。