仮面の男

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テレビ画面越しに見るモチズキは自分の知っている彼より少し精悍になっていた。

彼は望月ではない。小学校4年生の時に校内で行われた餅つき大会で、彼はおしるこを4杯おかわりをした。それがモチズキの愛称の由来だ。うどん屋では必ず力うどんを注文していたし、彼の家へ訪問した際に持参した大福餅を2つ同時に頬張る姿はモチズキそのものだった。彼は僕の親友だ。

「この度は大変申し訳ありませんでした」
登山に行き、急な天候変化に対応出来ず数日間身動きが取れなくなり救助隊に救出されたらしい。救出されてすぐの会見で、大変疲れた様子だが真摯な態度で記者達の質問に答えていた。一通りの会見が終わり、彼が退席しようとした時、1人の記者が尋ねた。
「今、何が食べたいですか?」
彼は少し擦れた声で答えた。
「カレーライス・・・」

騒動が収まった頃、モチズキに久しぶりに連絡を入れた。大学卒業後は実家のケーキ屋を継ぐらしい。
青春
公開:20/06/01 12:41
更新:20/06/01 14:15

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