『はるばる先へ』 Butter-Fly

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命がけの旅になる。
醜い芋虫は、高速で走る物体が行きかう道を渡ろうとしていた。
芋虫の歩みは大変遅い。一瞬でも歯車が狂えばその車輪に押し潰される。
だが行かねばならない。
芋虫は大横断を決行する。
どのくらい経ったか、半分以上は渡った。走行物は頭上を掠めただけだった。
だが影がさす。
巨人がこちらを見下ろしていた。
巨人は無慈悲で凶悪。その足の裏で潰された仲間は数知れない。
これまでか……と思って身をよじると巨人が呟いた。
「危ないだろ、こんな所にいちゃ」
次の瞬間、体が浮き、草むらに降ろされていた。
何が起こったのか分からなかった。だがこれで目的が果たせる。
芋虫はそれから羽化して蝶になった。
そしてひらひらと宙を舞ううちに思った。
あの顔も、誰かも分からない人に逢いに行こう。
何度生まれ変わっても、必ず逢いに行こう。
はるばる先へ、あの人に。
ゴキゲンに蝶は、きらめく風にそう思った。
青春
公開:20/05/30 20:47

とーしろさん

はじめまして~。
いつだって初心で、挑戦者のこころでぶっ込みたい素人モノ書きです。

沢山の方々に支えられ、刺激を与えられ、触発されて今日ももちょもちょ書いております。
一人だけでは生み出せないモノがある。
まだ見ぬステキな創造へ、ほんの少しずつでも進んでいきたい。

ショートショートというジャンルに触れる切っ掛けをくださった、
月の音色と大原さやかさんを敬愛し感謝しております。

興味をもって読んでくださる全ての方にも、ありがとうございます~^^

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