はるばる先に

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放課後の図書室。私は一冊の本を前に深呼吸する。
覚悟を決め、本を開く。表紙を捲れば虫にでも食われたのか人差し指程の穴が開いている。
数日前、その穴に友人が吸い込まれた。
穴を覗き込む。下のページの文字が見えるはずのそこには闇が蟠っていた。
指で触れてみるとまるで泥を押し込んでいるかのようにズブズブと沈んでいく。
上半身まで沈んだ所で目を開く。王子様と幸せそうに笑い合う友人を見つけた。
私はペンを手に何もない空中に言葉を書き込んでいく。
『王子様は結婚詐欺師。直ぐに貴方の恋は冷めてしまう』
書いた言葉は現実となり、友人は呆然と空中を見つめ、はるばる先にいる私と目が合った。
私は友人に手を伸ばし、本の世界から引っ張り上げた。
現実世界に戻ってきた友人は未だ夢見心地ではあるが数日もすれば元に戻るだろう。
興味本位で学校の七不思議なんて調べるものじゃない。その内の一つに本物がいるとは思わなかった。
公開:20/05/30 18:51

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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