はるばる先に

『はるばる先のコンビニ』と書かれた看板の前で俺は立ちつくす。
大型量販店と見間違える程に大きな店から出てくる人はとても嬉しそうに袋を抱えている。
ここの商品はそんなに良い物なのか…気になって入ってみた。
店の奥に弁当が並んである。そこに向かうこと数十分…まだ弁当に辿り着けない。
目に見えているところに弁当がある。思いっきり走った。しかし弁当との距離は縮まらない。
俺は近くをバイクで通りがかった店員に声をかけた。
「ここは『はるばる先のコンビニ』ですよ。お弁当購入なら往復４時間はかかりますね」
そんなに時間をかけられるか！
来た道を引き返す。帰り道は来た時以上に時間がかかった。
店を出るも、はるばる先のコンビニの影響か、はるばる先に家があるように感じられる。
家に帰ったら妻に謝ろう。
「弁当に人参が入っていただけで怒鳴ってごめん」と。
そして「毎日ご飯を作ってくれてありがとう」と感謝しよう。