笑う傘

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「もう何本目よ!」
 妻の怒声にドキリとするが私はそんなに呑まない。
 どうやら小二の息子が、この梅雨の間に自分の傘を4本も壊し5本目に突入したらしい。怒るのも無理はない。ここは私が父として5本目の傘も貫く程の雷を落とさねば!
 玄関にはしょげ返る息子。
 その時、壊れた傘達が突然、宙に浮き合体すると自転車のように変形して私を乗せて飛び立った。

 辿り着いたそこには小学生の俺がいた。その手には杖や刀、ゴルフクラブ、友達の飛ばす水飛沫を跳ね返すバリアになり大活躍する傘。雨に濡れながら一緒に笑って遊ぶ傘が。

 気付くと私は玄関に戻されていた。横たわる傘達は光り輝き笑っている。私は彼らに深々と頭を下げた。
「ちゃんと感謝して、もっと大切に使わないとな」
 息子は傘を抱き抱え頷いた。
 梅雨の間に一緒にどんな冒険をするのだろう? 
 今日も雨。
 しかし雷予報は外れ、クスッと晴れ間がのぞいた。
ファンタジー
公開:20/05/31 16:04
更新:20/09/29 16:43
傘の合体&変形以外は 7年前の三男の実話

NORIHISA( 碧の星 )

   創作活動はこちらのショートショートガーデンが初めてです。令和元年12月31日から投稿開始しております。
 勉強になりますので、どのようなことでもお気軽にコメントいただけると嬉しいです。厳しいご意見もお待ちしております。
 どうかよろしくお願いいたします。

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