ゲームフィッシング

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数日前から、アパートの窓を少しだけあけて釣り糸をたらしはじめた。屋台の太り過ぎたおやじは1週間たっても引きがないならエサをかえたほうがいいと汚いつばを吐きながら笑っていたから、まだエサはそのままだ。
じっと待つ。待つことは慣れている。
それでも、ただでさえつまらない毎日で引きのない釣竿を見ているとますますつまらなくなってくる。
久しぶりに下をのぞくと、口をあんぐりと上にあけて天の恵みの雨水を待ちわびるかのようなニンゲンがうじゃうじゃとさまよっている。まばたきもせず、手は地べたにだらりと垂れ下がりヤスリでこすりつけたみたいに血と皮と土と埃で団子みたいになっている。
釣り上げたら、腕ごと切り落としてしまおうと思う。食べられないわけではないが、どうも食欲は萎えてしまう。
ぼんやりと、そんなことを考えていると釣り糸がわずかに引いている。弱い引きだ。やっぱりオジサンだ。食えたもんじゃない。
ホラー
公開:20/05/31 15:22
更新:20/09/22 15:19

きろひの、えう

ぼそぼそと創作話を書いています。

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