4
4

「今日は珍しく混んでるなぁ」タオルを肩に掛け、浴場を見渡しボヤく客。

人間たちに混じり、何体かのロボットが湯船に浸かっている。完全防水をまとったロボットは、マシンの疲労を癒やすため、こうして銭湯を訪れるようになった。
シミュレーションされたロボットの表情が、心地良い湯の温度に思わず緩む。

「お! またはじまったぞ!」客のひとりが茶化すように叫んだ。

技術的にまだまだ熱には弱いロボット。感情を司るパーツが熱で故障しがちなのがサウナだ。ロボットのサウナ利用を禁じている銭湯もある。
どうやらロボット同士がケンカを始めたらしい。

それを見かねたのは、50年近くこの銭湯に通うおっちゃん。勢い良くサウナのドアを開けると、二体のロボットの首根っこを掴んで出てきた。

「頭を冷やせ!」

そう言うと、おっちゃんはロボットの頭――すなわち、感情を司るパーツの部分を水風呂にドブンと浸けた。
SF
公開:20/05/31 14:21
更新:20/05/31 20:30
SF ロボット 銭湯 未来

ときわひでたか(常盤 英孝)( 大阪 )

《3分後にはもう、別世界。》
ショートショートを執筆する、超短編小説家。

ショートショートの魅力である驚き・衝撃・裏切り・どんでん返しの展開を楽しんでいただければ幸いです。

★Amazon Kindleで『妄想するショートショート』販売中!
https://www.amazon.co.jp/dp/B07WPH1CDH?tag=naniwayorozu-22&linkCode=ogi&th=1&psc=1

◇ショートショート作品は小説投稿サイト『エブリスタ』で発表しています。
https://estar.jp/users/155269596

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容