迷子の子猫 後編

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数日ならマンションの管理人さんに断って子猫をかくまうことは可能かもしれない。

でも、私は躊躇した。

そのまま懐いて子猫が我が家にいついたら。うんちやおしっこの始末はどうすればいいのか。大きくなって子猫に家族ができちゃったらどうすれば……。いろんな想像が頭を駆け巡った。

「飼うのは、無理だよ」

そう話すと妻もうなずいた。娘は黙り込んだ。

冬じゃないから凍え死にはしないだろう。玄関の外でそっとしておくことにした。

翌朝。

子猫はいなかった。娘に伝えると、伏し目がちにぽつりと言った。

「みんな、優しくないんだね」

目が赤らんだ。

大人になるって、嫌だな。

歳って、取るもんじゃないな。

雨はやんでいた。

見上げると、抜けるような広い青空。

空気は少し、湿っていた。
その他
公開:20/05/31 09:39

ふみなか( 東京 )

40代半ばの会社員。家族は妻、中3息子、小6娘。つらつらと文章をつづるのが好きです。読んでいただけたら嬉しいです。

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