迷子の子猫 前編

0
1

激しい雷雨に見舞われた夜。ずぶ濡れになって仕事から帰ると、玄関の前に1匹の子猫がたたずんでいた。

我が家はマンションの1階にある。どこからか迷い込んでしまったのか。

初夏にしては肌寒い。子猫は震えていた。白と茶色の毛並みがふわふわ、ぶるぶると。目はうつらうつら。

「子猫がいるよ」

家族に知らせると、娘の目が輝いた。

「動物を飼いたい」。事あるごとにねだってくる娘だ。マンションの決まりがあるから無理なんだよ。そのたびに言い聞かせてきた。牛乳を入れた皿をそっと差し出す娘。警戒心が強いのか口をつけようとしない子猫。それでも娘は嬉しそうだった。

お家に入れてあげようよ。

そう、顔に書いてあった。
その他
公開:20/05/31 09:36

ふみなか( 東京 )

40代半ばの会社員。家族は妻、中3息子、小6娘。つらつらと文章をつづるのが好きです。読んでいただけたら嬉しいです。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容