ヴァイオリンの男

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男は本気だった。
いかなる手段を用いても愛する故郷を暴君から救わねばと思った。しかし男はただの楽器弾きである。
そこで男は王に言った。

陛下が私にヴァイオリンを弾くのをやめさせるまで、私がヴァイオリンを弾き続けることができれば私の勝ち、陛下には退位して頂く。私が途中で弾くのをやめれば私の負け、私の命を差し上げよう。

王は鼻で笑った。なに簡単なことだ。

男は弾き続けた。
なんと一月もの間弾き続けた。だが丁度一月経つ晩、男はヴァイオリンを弾きながらそのまま死んだ。

王は男の行為を愚かだと冷笑したがそれからずっと、ヴァイオリンの音が王の頭から消えることはなかった。

それから一月経ち、王はとうとう気が触れて
やめろ、やめてくれ。
そう叫びながら死んだそうだ。

その後新しい王が即位してその国は平和になったが、今でも時々どこからともなくヴァイオリンの音が聞こえることがあるそうです。
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公開:20/05/30 17:12

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