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気怠い朝だ。目覚ましを止めキッチンへ向かう。味のしないコーンフレークを袋から手づかみで口に押し込む。ポリポリと力無く噛み砕きぬるい牛乳で胃に流し込んだ。
そのまま洗面所に行き鏡に向かってやる気のない顔を手のひらでパシリ叩く。顔を洗うついでに髭を剃った。どこか切ったらしい。顎につく白い泡に赤が滲む。と同時に後ろの女と目が合った。

誰?

体が硬直する。剃刀を持つ手が微かに震えた。力を振り絞って目を閉じ、もう一度開けると、女は俺の左肩に顔を乗せていた。
体がいうことをきかない。女はゆっくり顔を上げて俺の左耳を齧る。血の滲む泡を人差し指で掬い、舐めた。
女の赤毛の先が俺の左腕をちくちく刺していた。
手から剃刀が落ちる。それが洗面台でカラカラと回る音だけがやけに響いた。

──────

満員電車の中。人がジロジロと俺を見る。俺だけが気づいていなかった。シャツが赤黒く染まっているのを。
ホラー
公開:20/05/30 11:37

夜野 るこ

  夜野 るこ と申します。
(よるの)

皆さんの心に残るようなお話を書くことが目標です。よろしくお願いします。

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