カッコいい男

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「それで先生、どうなんですか」
「結論から言うとね如月さん、これ以上カッコいい歌を歌わないで下さい」
「どういうことですか」
「これ以上歌うと、最悪死にます」
「し、死ぬ?」
「最近どんな歌を歌われました?」
「えっと、三木道山の『Lifetime Respect』を」
「あ~ダメだ。そんなの歌ったら死んじゃいますよ」
「それじゃ、反町隆史の『POISON』は」
「即死だそれ。カッコよすぎる」
「そんな」
「いいですね。もう歌わないで下さい」
「平井堅」
「やめて下さい」

病院からの帰り道をとぼとぼと歩く。
泣くな、泣くな俺。まだ俺にはカッコいい動きがある。
涙を拭い顔を上げる。
強くなるんだ。
「涙の数だ~け強くなれ~るよ~、アス……ガハッ!」
口を押さえた手に、べっとりと血が付いていた。
「こ、これもダメなのか」
せめて最後に。
俺は必死でムーンウォークをすると、ばたりと倒れた。
その他
公開:20/05/28 19:09

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