大人の野球拳

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「お前は言われた仕事もまともに出来んのか!」
上司の雷が私の身を竦ませる。
「すみません!残業してでも終わらせます!」
「当然だ!今日中に終わらせないとクビだからな!」
涙をぐっとこらえ、仕事に取り掛かる。
私がいけないんだ。新企画にばかりかまけ言われた仕事をやっていなかった。そのツケを今、払わされている。

終業のベルが鳴る。上司が「野球拳をやろう」と言い出した。
ぽかんとする私に苦笑いを浮かべる先輩達。
軽快な音楽が流れる。焦ると拳を握る癖のある私はグーを出した。
しまった…気付いた時にはもう遅い。
先輩達はチョキを出していた。
えっ…?
「よし皆、一肌脱ぐぞ!」
上司の一声で皆が私の仕事を手伝ってくれる。仕事は1時間足らずで片付いた。

その夜、居酒屋で先輩が教えてくれた。
上司は厳しい反面、ちゃんと頑張りを見てくれているのだと。
そして採用試験では私を1位指名してくれた人なのだと。
公開:20/05/28 19:04

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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