石が好きだ

一つ積んでは父のため
二つ積んでは母のため
薄暗い賽の河原で延々繰り返される悲惨な光景
しかしここに目を輝かせ、それをする問題児が一人
鬼が壊しにくるまでに、いかに高く、いかに芸術的に積み上げられるかを一人挑戦し続けるツワモノだ
石の形、性質、比重すべてを一瞬で見極め、すごい速さで積み上げていく
壊された。次はグラデーション。どうだ！
壊された。次は逆ピラミッド。どうだ！
そんな幸せな毎日にも終りが訪れる
「転生です」菩薩の非情な一言で、あっという間に現世下り

「すごいっ！　この子天才だわ」
碁石を高く積み上げる赤ちゃんに母親は喜びの声をあげた
「ここまで手先が器用なら外科医にでもなれるんじゃないか」
興奮した声で父親もいう
「大人になるのが楽しみだ」

『ふん、誰が大人になるか』
さっさと夭逝してやる
再びあの河原で石を積み上げることを想像し、赤ちゃんは一人胸を高鳴らせていた