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ダイヤモンドヘッドを遠望できる滑り台のてっぺんから、出初式みたいに体を乗り出して、ものすごく首を捻っている老人に、私はなんといって声をかけたのか、もう覚えていません。老人は顔を赤らめていました。酔っているようでもあり、興奮しているようでもあり、照れているようでもありました。多分、その全てだったのでしょう。
老人は「目に焼きついている光景を探して、世界中を旅してきた」と言いました。
「子供の頃、浜でこの筒を拾ってね。望遠鏡か万華鏡だと思った。私は何故かそれを太陽に向けた。キナ臭い匂いがして、目の中に『光景』が焼きついてしまったんだ。とても不自由で、ずっと懐かしかった。私はその『光景』にぴったり重なる場所を探し求めた。でもまさか、こんなに有名な場所だったなんてね」
老人は目を潤ませていました。
私はその筒を見せてもらいました。それは、胴の内部に海水や砂が入ってしまった単眼式顕微鏡でした。
老人は「目に焼きついている光景を探して、世界中を旅してきた」と言いました。
「子供の頃、浜でこの筒を拾ってね。望遠鏡か万華鏡だと思った。私は何故かそれを太陽に向けた。キナ臭い匂いがして、目の中に『光景』が焼きついてしまったんだ。とても不自由で、ずっと懐かしかった。私はその『光景』にぴったり重なる場所を探し求めた。でもまさか、こんなに有名な場所だったなんてね」
老人は目を潤ませていました。
私はその筒を見せてもらいました。それは、胴の内部に海水や砂が入ってしまった単眼式顕微鏡でした。
ファンタジー
公開:20/05/29 10:13
宇祖田都子の話
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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