はるばる先に

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虎穴に入らずんば虎子を得ず。美食家たるもの、その食材が危険であっても食べなければならない。
生牡蠣のおいしさを世に伝えたのは誰だ?美食家だ。
猛毒のベニテングダケが実は美味であると突き止めたのは誰だ?美食家だ。
そう、美食家は危険を承知で料理と向き合わなくてはならない。
そんな私の夢はかの有名な洋食店・山猫軒で食事をする事である。
かの店ははるばる先にあるかと思えば、私のすぐ目の前にあったりもする。
これまでは恐れの余り、逃げ出していたが私は新たな美食の扉を開く為、そのドアノブに手をかけた。
注文に従い、店の奥へと進んでいく。
皿の上の私は主によって美しく頭を切り開かれ、脳の一部をスプーンですくわれた。
主の口の中で蕩ける私はこれこそが求めていたものだと理解した。
美食家たるもの、やはりこの身を誰かに味わってもらいたいのだ。
主はスプーンを置き、溜息を吐いた。
「まだまだ深みが足りないな」
ホラー
公開:20/05/27 18:51

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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