ツンデレ階段

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ただの階段が、途端に下りのエスカレーターに変化する。それを俺は懸命に登り続けた。階段上から見下ろす友人は、楽しそうに笑っている。
「言ったろ、うちの階段ツンデレだって」
「な、何故! どうして急にツンツンしだした!」
「お前の登り方が乱暴だったからだろ」
自覚はなかったが、認めるしかない。そして、体力の限界も近づいていた。
「ど、どうすればいいっ」
友人は応える。
「愛の言葉を囁やけば、効果あるかも」
「あ、愛っ?」
言いつつ、俺は懸命に思案する。しかし、疲れからか頭が働いてくれない。思いついたことを、そのまま口にーー
「あ、愛しています!」
友人は吹き出した。俺も顔が真っ赤になる。でも、階段だけは反応が異なっていた。
下る勢いが弱くなり、今度は上向きへ。その勢いも強まり、俺は為す術なく上へ放り出された。
倒れ込む俺を見て、友人はゲラゲラ笑いながら一言。
「階段がデレたぞっ、良かったな!」
ファンタジー
公開:20/05/27 07:22

早見並並( 神奈川県 )

物語創作に興味があります。

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